トンネルへ
そこには、われわれを隔てる無限の混沌がある。この無限の距離の果てで賭が行なわれ、表が出るか裏が出るのだ。君はどちらに賭けるのだ。理性によっては、君はどちら側にもできない。理性によっては、二つのうちの どちらを退けることもできない。
したがって、一つの選択をした人たちをまちがっているといって責めてはいけない。なぜなら君は、そのことについて何も知らないからなのだ。――いや、その選択を責めはしないが、選択をしたということを責めるだろう。なぜなら、表を選ぶ者も、誤りの程度は同じとしても、両者とも誤っていることに変わりはない。正しいのは賭けないことなのだ。
――そうか。だが賭けなければならないのだ。それは任意的なものではない。君はもう船に乗り込んでしまっているのだ。では君はどちらを取るかね。さあ考えてみよう。選ばなければならないのだから、どちらのほうが君にとって利益が少ないかを考えてみよう。
――「パンセ」 第三章 賭の必要性について 233 パスカル(前田陽一/由木康訳 中央公論新社中公クラシックス)
「よし、行くぞ」
と、チェロキーはいいました。
「まって!」
ママがソルに歩みよります。
「これを」
ビクッ、となって、されるがままのソル。
「ん、なんでママが?」
ちょと、おどろいて、たずねるチェロキー。
「きのうね、ダイくんにムリ言ってもらったのよ」
ダイの方を見て、
「ね、いいわよね?」
ふり向くと、ダイはうなずきました。
「ゴメンね。あたしだって
小さい声でいうママ。
「なに言ってんの?」
ダイが聞きかえすと、
「なんでもない」
と、ママは口をつぐみました。
二人は
「じゃあ、行ってくる」
「気をつけて。
「
チェロキーがアゴで、ソルをうながしました。
「あ、ありがとうございます。サヨナラ」
うらがえった声でいうと、ペコペコ、からくり
「よう、たっしゃで
ダイが言い終わる前に、エンジンがかかりました。
「ホント、
エンジン音に
「
ママの問いに足を止め、彼は
「なにも、今でなくても……」
ダイは、メンドクサそうにむきなおりました。
「ズルズルってなるだろ? このまま、ここにいたら」
「――あんたたち見てて、そう思った。
「……」
むごんのママ。
「じゃあ、そういうことで」
しゅっと、かた手を上げました。
「気をつけてね」
後ろ手をふって、彼は
エンジンがかかりました。
どんどん、はなれていくオンショア
ふいに
「せわになったな、ジジィ!」
と、大声で
ヒールの高いサンダルでのびをして、ママは手をふって返しました。
まばらな
トップは閉じたままですが、風がバタバタ音を立てて、
この方の
きれいな緑の
かろうじて「うさぎ島 1.2km」と
うさぎ
手前でチェロキーはハイビームを
――と、さっそくバリケードです。
チェロキーは
見るとバリケードは
もどってくるなり、
「よし、ここで
と、いいました。
「?」
のみこめない、ソル。
「聞えないのか?
「……」
チェロキーは
「おれは、これからすることがある。後は、おまえ一人で行け」
「……」
アクシデントにろうばいしても、ソルは
「――サヨナラ」
先走って終わりのコトバが、出てしまいました。
「やけに、ものわかりがいいな(笑)」
めんくらって、ふきだすチェロキー。
ソルもいみなく
いちどの切りかえしで、ラングラーは走り去りました。
ふたたび
「おかしなガキだ……」
と、彼はつぶやきました。
ソルは一人、とりのこされてしまいました。
まるみをおびた
なるほど、せまい
こんどは、光を
おもったほど、のびてくれません。
白い
バリケードをくぐって、しばらくいくと、道は
――パッ!
と、あかるくなりました。
まだ、スイッチを入れていません。
はじめた、ばっかりなのに!
ビクンッ、となるソル。
カンオンでした。
「なんだよ」
「どこいってたんだよ、お前は……」
口もとが、ほころんでいました。
「そうか、
声のトーンが
「とりあえず明かり消せ。エネルギーがもったいない」
ライトをグルグルまわして、いいました。
「よし、いくか」
ここからが、
ギョッとするほど大きな
黒い字で「9km」と書かれていました。
出口までの
「
と、ねんをおしました。
なんだか
「一時間?」
「――いやいや、そんなはずない、そんなはずない(笑)」
「まだ十分もたってない。
じぶんの
ぼ~っとなってキーンとなって、
なでると
もう引きかえそうか?
とも、思いました。
ていうか、とっくからそう思っていました。
後、のこり9キロ。
まだ19分の1……。
カンオンのおせっかいな
まだ、はじめたばっかりなのに、もう19分の1だと思えってか?
ムリいうなよ。
フフッと、うすらわらい。
「――じゃあ、おまえがやれよ!」
とつぜんの大声。
トンネルの中は
一方、クラランの
ビックデータのせいではありません。マスコミ
プライバシー
一時ソースへたどりつけるのは、あるていどの
それは
じりじりと、
とはいえ、
しかるに、いったんことが
インテリでありながらも、
この
で、フリークスぎらいなアポロン三島の私語。けっきょくのこったのは、さらなる空白だけでした。――ちなみに、彼の
いつだってニュースになるのは、目先の人たち、やってしまう人たちばかりでした。彼らは人間らしいというより、
とにかく
ようするに、
(他サイトでも投稿しています。)
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